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越境物の法的扱いと、円満解決のための「覚書」締結術

建替え工事において、隣家の雨樋や塀などがわずかでも自敷地に越境しているケースは、古い住宅地では決して珍しくありません。「昔からの付き合いだから」と放置しがちですが、新築は境界を明確にする絶好の機会です。ここで曖昧にすることは、将来的な所有権の喪失や、境界を巡る不要な争いの種を温存することに他なりません。

  1. 法的侵害を「政治的折衝」で解決する

隣地の物が自敷地にはみ出している状態は、法的には「所有権の侵害」です。しかし、いきなり法的正論で撤去を迫れば、良好な近隣関係は崩壊します。

  • 客観的な事実の提示: 感情論ではなく、土地家屋調査士による確定測量図という「客観的な証拠」を隣人に示します。
  • 「理由」の活用: 「建替えにあたり、将来の売却や相続のために法的な整理を求められている」という、外部的な事情を交渉の理由にすることで、隣人に角を立てずに冷静な話し合いの場を作ることができます。
  1. 「覚書」による賢明な妥協案

即時の撤去が困難な場合、無理強いをする必要はありません。有効な手段は「覚書(合意書)」の取り交わしです。

  • 将来に向けた約束: 「現在は現状のままとするが、将来、相手方が建替えや売却を行う際には、相手方の責任と費用で撤去する」という内容を明文化します。これにより、今すぐの紛争を避けつつ、法的に自分の権利を主張できる状態を確保できます。
  1. 不在所有者への対応と書面の重要性

隣家が空き家の場合や、所有者が遠方に住んでいる場合でも放置は禁物です。

  • 適切なプロセス: 固定資産税の納税通知書などから所有者を特定し、書面でのやり取りを行います。このとき、必ず署名捺印のある正式な書類を作成し、大切に保管してください。
  • 法的防衛の徹底: 越境物を放置して建替えを強行すると、それが既得権益化し、将来的に境界を勝手に変えられたとみなされるリスクがあります。基礎を掘る前の今こそが、土地の権利をクリーンにする最後のチャンスです。
  1. 権利を守り、絆を維持する真骨頂

相手に敬意を払いながらも、守るべき権利は守る。このバランスがシニアの建替えにおける法的防衛の真骨頂です。建替えを単なる「建築」というハード面のイベントではなく、土地の権利関係を再構築する「権利の調整期間」と捉えてください。工事が始まってからでは遅いです。見えないトラブルの芽をこの時期に摘み取り、安心と平穏を未来に引き継ぎましょう。

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