【背景と概要】
シニアの建て替え計画が長期に及ぶ場合、常に隣り合わせにあるのが「認知症の発症リスク」です。日本の法律では、本人の認知機能が低下(意思能力喪失)したと判断されると、「建築請負契約を結ぶ」「銀行からローンを借りる」「土地の名義を変更する」「定期預金を解約する」といったあらゆる法律行為が完全に凍結されます。たとえ実の家族であっても、親の口座からお金を下ろして建築費を払うことができなくなります。このリスクを回避する最先端の仕組みが「家族信託」です。
【家族信託の仕組み】
家族信託とは、親(委託者)が元気なうちに、信頼できる子ども(受託者)との間で信託契約を結び、財産(土地や建築資金用の預貯金)の「管理・処分の権限」を子どもにスライドさせておく制度です。
- 名義の変更: 土地の名義を「信託」という形で子どもに移します。
- 管理口座の開設: 親のお金を「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」という子どもが管理する専用口座に移します。
これにより、万が一、工事の途中で親の認知症が進行してしまったとしても、土地の所有権や資金の管理権はすでに子どもにあるため、子ども自身の判断でハウスメーカーとの追加契約にサインしたり、信託口座から建築費用をスケジュール通りに振り込んだりすることが可能になります。
【建て替え計画への組み込み方】
家族信託を建て替えに組み込む場合、ハウスメーカーの営業担当や、提携している司法書士との密な連携が不可欠です。なぜなら、信託された土地に家を建てる場合、住宅ローンの審査(リ・バース60など)が通常より複雑になるためです。
銀行によっては「信託された物件への融資」を嫌がるところもあるため、設計の初期段階から「家族信託を前提として進める旨」を金融機関に打診しておく必要があります。初期費用(専門家への報酬や登記費用)として数十万円〜百万円程度かかりますが、数千万円の建築プロジェクトが途中でフリーズするリスクを考えれば、シニア世代にとって極めて合理的な保険と言えます。
















