【背景と概要】
「高齢になった親が老人ホーム(高齢者施設)に入所した。誰も住まなくなった古い実家を、この機に子ども世帯が住めるように建て替えたい」という相談が増えています。ここで問題になるのが、前述の「小規模宅地等の特例」が、親が施設に移った後でも適用できるかという点です。かつては厳しく制限されていましたが、税制改正により要件が緩和されました。しかし、建て替えを伴う場合は依然として非常に難易度が高くなります。
【施設入所後も特例が認められるための基本要件】
親が施設に入所した後、その土地が「特定居住用宅地等」として認められるには、以下のすべてを満たす必要があります。
- 親に要介護認定(要支援または要介護)が出ており、厚生労働省が定める一定の施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サ高住など)に入所したこと。
- 親が施設に入った後、その実家を「他人に賃貸」したり、別の親族が住んだりせず、空き家の状態(または親の荷物が置かれたまま)で管理されていたこと。
【建て替えを行う場合の高いハードルと対策】
問題は、親が施設にいる間に「子どもがその家を解体して新しく建て替える」場合です。
家を壊して新築するということは、建物の所有権や居住実態が大きく変わることを意味します。もし、親の名義の土地に、子どもが自分のお金で「子ども名義の家」を建ててそこに住み始めてしまうと、親が老人ホームにいる以上、親とその子どもの「同居実態」を作ることは不可能です。この場合、親が亡くなったときに小規模宅地等の特例は適用できなくなり、土地の相続税評価額は100%(減額なし)で課税されてしまいます。
これを防ぐための現実的な解決策は、以下の通りです。
- 建物の名義を「親の名義」のまま建て替える: 資金は親の預貯金から出すか、親の名義でリ・バース60などのローンを組みます。親名義の家を建て替え、将来親が一時帰宅できるような部屋(実質的な親のセカンドハウス)として維持しておけば、特例の対象として認められる可能性が残ります。
- 生前贈与や売却の検討: 特例が使えないことが確実な場合、無理に施設入所後に建て替えるのではなく、土地を子どもに生前贈与(相続時精算課税制度の活用)するか、実家を売却してその現金を老人ホームの費用や子どもの新居購入資金に充てる方が、トータルの税務メリットが大きくなることがあります。
















